森海渡:株式会社tabeco 代表取締役
サンディエゴ出身。高校在学中に起業を経験し、その後、様々な分野で事業立ち上げを行い、現在は上智大学に在学しながら、株式会社tabecoにてHR Tech事業を展開している。

2度の事業失敗から3度目の事業へ

ー現在のお仕事について教えてください

去年の11月に起業しました。
今まで2つ事業をやったのですが、なかなか上手くいかなくて、今回三度目の正直という事で、3つ目の事業をやっています。

事業内容としては、”HRport”という、HR Tech系のプロダクトを作っています。

どういうものかというと、人事の方が面談をする際に、アンマッチだった人材を会社さん同士で推薦しあえるプラットホームを開発しています。

ー1回目、2回目の起業は3回目の起業に活きていますか?

活きています。

僕自身の経歴を簡単に説明すると、高校3年の時に人材紹介のエージェントをスモールビジネスで4、5人ぐらいで立ち上げたのが事業のはじまりです。

その後、フリーランスで採用コンサルティングを1、2年ほどやっていました。その当時、すでに多少の人材領域での経験があったのですが、最初は、人材とは別の領域で挑戦してみようと思っていたんです。

そこでやってみたのがグルメ系の事業だったり、介護系の事業でも起業しました。

これがなかなか上手くいきませんでした。この1社目と2社目の事業立ち上げ経験を経て、業界の経験がちゃんとあって、ユーザーの課題がわかっている領域で起業しないと上手くいかないということを、2度の失敗から学ぶことができました。

そこでHR事業にシフトしました。起業は簡単ではありません(笑)

現在は休学しているのですが、大学3年生の年です。

学生で起業する人が増えている

(学生で起業する人が)最近結構増えていますね。
高校生の時はあまりいなかったのですが、最近は学生起業家が結構増えています。

なので、学生企業に特化したVC(ベンチャーキャピタル)も出てきています。
現在は、若手から独立して働くというのはスタンダード化されていると思います。

ー学生で起業するメリットは何だと思いますか?

学生で起業するメリットは資金のリスクがほぼ低いことにあると思います。
以前は銀行から借り入れしたら「絶対に返さなければいけない」「利子が高い」という中で「返せなければ首を吊る」という時代だったと思うのですが、IT発展した現在であれば、初期投資がかからないのでローコストで始められます。

かつ、今市場はかなり変化していて、投資家も資本が余っており、投資先が見つからないという状態なんです。

なので、株式を活用したファイナンス、株式調達が非常に容易にできます。
つまり、借金せずともお金をもらって始められます。

お金という一番のリスクが解消されるわけです。
それ以外のリスクは、もはやリスクの内に入らないと僕は思います。

学生で起業することはメリットしかないと話す

複業経験から現在の事業立ち上げへ

ー現在の事業に至った経緯をもう少し詳しく教えてください。

弊社のビジョンに当たる採用コンセプトを「寄り添う採用をスタンダード化する」としています。

今は学生と企業の距離が凄く縮まっていると思うんです。
例えば、20年前と比較すると、最近はカジュアル面談というものが出てきて、Wantedly等の採用媒体を通してカジュアルに学生をオファーできます。
加えて、もっと企業のことをよく知るためにインターンシップが主流となってきました。

このような流れもあり、学生と企業の距離が凄く縮まっています。
その一方で、自社では「採用に至らなかった」という時には、今でもなお無機質な冷たい不採用通知が「ボーン!」と送られてきます。

いわゆる「お祈りメール」です。
採用市場において、これだけ求職者と企業の関係性は縮まっているのに、不採用になった時のオペレーションは、下手したら100年近く変わっていない現状があります。

今人材不足が進む中で「一つ一つの出会いを大切にする」「一人一人に寄り添っていく」ことが大切だと思うんです。
新卒の時には採らなかった人材が、別の会社で4、5年働いて、めちゃくちゃ優秀になっている可能性もあります。

企業側も、お祈りメールをぶん投げて縁切っていたら、その後その方とはもう接触できる可能性が極めて低くなります。

しかし、最後まで寄り添って、一緒に就活に悩んで、企業選びや企業紹介をしてあげて…ということをしておけば、後に自分たちの会社に入ってくれるかもしれません。

このように「全ての出会いの可能性を最大化させることができるのでは」と思い、事業を起こしました。
今やっているHRportは、不採用通知を推薦オファーに変えるという事業です。

今までは「ご縁がありませんでした」で終わっていたものが、HRportがあるとどうなるかというと「うちとは合わなかったけど、あなたのことは優秀だと思っているし、うちを受けてくれたことにもの凄く感謝している。なのであなたの求職活動をサポートさせてください」という形で、リンクが送られてくるんです。

そこに、学生が登録すると、うちのプラットフォーム上で「その企業を受けました」というお墨付きがもらえます。

「どの会社の何次面接までいったか」というデータが紐付けされます。
そうすると、他の会社さんは「こういう会社を受けているならうちにも合うかもしれない」と思い、学生側へスカウトを送ります。さらに、企業側に人事も採用する時に「○○会社の××選考までいったような学生を引き採りたい」とアピールするんです。

採用ベンチマークと言われる概念があって、どの企業の何次までいったら自社でも大体通るという基準値は皆さん持っています。
その基準で学生を見て、スカウトするという仕組みがあっても良いんじゃないかという話です。

複業でスタートアップから上場企業まで経験

大学入学する少し前ぐらいから複数の会社で採用コンサルティングをスタートアップから上場企業まで、幅広くやらせてもらっていました。
仕事のスタンスとしては、僕が個別で営業に行って、個人事業主として契約を取って行くという形で行っていました。

ー仮に「高校3年生が採用コンサルティングできますよ」と言って来ても、企業側は高い確率で疑うと思うのですが…

それはおっしゃる通りで、一般的な採用コンサルは「どういうチャンネルでどういう運用の仕方をすればどれだけ採用できるか」という話が多いと思います。

私は自分の強みを活かし特化型の営業活動をしていました。
それは、超優秀層学生の早期獲得や戦略、オペレーションに特化した採用コンサルティングです。

これを、なぜ私ができていたかというと、当時高校3年で事業を立ち上げた人はあまりいないため、それをフックに先輩の学生企業家や学生の時からフリーランスでやっているような優秀層学生の方々とのコネクションが多くできました。

そういった学生は、「このまま自分で続けていくか」それとも「企業に就職するか」で迷っている人も多いため、迷っている学生に対してクライアント企業をどういうブランディング・仕組み設計・魅せ方をすれば、そこに入社したいと思うのかを独自でリサーチし、それに基づいて僕が企業側へアドバイスを行っていました。

ー法人側の案件獲得はどのようにされていたのですか?

法人の獲得については、自分自身が泥臭く採用イベントに出向いて、人事さんとコネクションを持って、そこから案件を得たという形が多いです。法人側も自分が高校生で企業したことを武器に人事へアプローチしていきました。

ー学生側、法人側ともにご自身の強みを活かしていたのですね!
ちなみに学生でありながら、セルフマネジメントはどのようにしていたのですか?学校があるのでほとんど時間がないように思いますが?

最初はもうどうしたらいいかわからなかったです(笑)
大学になって少し落ち着きましたが、高校の時は本当にめちゃくちゃでした。

学生服で右手に学生鞄、左手にスーツのキャリーケースを持って、学校が終わったら学校のトイレでスーツに着替えて、校門を出るというような生活でした。
周りからは凄く変人扱いされていましたね(笑)

複業時代は、学生服とスーツの両方持ちで生活されていたそうです

推薦受験のために参加した「課外活動」がきっかけ

ー森さんの原動力は何だったのでしょうか?

元々エネルギーがあるタイプでした。
文化祭実行委員会や運動会で活発に動いて、部活も2つ入っていました。

陸上部と柔道部です。
しかし足を怪我してしまい、スポーツがあまりできなくなってしまったんです。それがきっかけで、有り余ったエネルギーをどこに発散して良いか分からない状態が、高校2年生の時にあって、辛い時期でした。

そうして受験生になったのですが、地道に勉強することは性に合わないと感じていました。
なので推薦で受験をしたいと思っていて、「成績に加え、何か課外活動のようなものをしておけば、推薦は堅いんじゃない?」と担任に言われたのが、実はきっかけでした。

「何か良い課外活動はないかな」と探していて、最初に出会ったのが、いわゆる学生団体でした。
そこは教育系の学生団体で、中高生と文部科学省の人達が未来の教育を考えていくという活動をしていました。
ただの単発イベントだったのですが、当時の僕からしたら凄くインパクトが大きかったんです。

自分が友達とカラオケに行ってワイワイしている間にも、自分と同年代や年下の中学生が社会のことを考えて、偉い人に向かって「馬鹿じゃねえの?本当はこうあるべきだろ!」と発言しているのを見て、かっこいいと思ったんです。

それで、僕もこんなふうに世の中にインパクトを与えたいという思いをもったことがきっかけで、このような活動を始めました。
今もその思いは変わっていません。

ーその中でどのようなことにやりがいを感じていましたか?

当時複業をやっていた時のクライアントとの繋がりがあって、アドバイザリングをしていく中で、たまにイベントの運用代行をしていたんです。

採用イベントの企画運用です。しばらくして人事の人から連絡が来て「実は2、3年前のイベントに来た○○くん、うちに内定したんですよ」という連絡が来たり、学生側からも「□□に行くことになった。色々教えてもらったり、相談のってくれて本当にありがとう」というような連絡が来たり、クライアントや学生から感謝されるのは、僕自身がやりがいを感じる瞬間でした。

ー当時抱えている案件数はどれぐらいだったのですか?

10件ぐらいです。10件/月を常に持っておくことを心がけていました。終了した案件があれば、新しく営業をして取りに行くという形で継続していました。

ーここだけの話、普通にアルバイトをしている学生と比べて、どれぐらい稼がれていたんですか?

新卒採用なので季節性がありますが、一般的な高校生の2~6倍ぐらいだったと思います。
なので実家にお金を入れたり、学費を自ら払っていたりしました。

ー色々なお仕事をされるのは大変だったと思うのですが、それを続けてこられたコツはありますか?

学業の時間を引いた余暇の中で、どれだけできるかというのを逆算して、案件数を決めていきました。
僕の場合、本業は学生なので、そこがおざなりにならないようにしています。
そもそも僕自身がそこまでお金に興味がなく、「最低限の暮らしができて、ちょっと親孝行できたらいいな」という考えなので、案件をもの凄く沢山持とうとは思っていません。
なので、学生をやって、余った時間でどれぐらいできるのかというところから、やっていきました。

高校生時代から逆算思考で物事を考えていたそうです

企業からのお祈りメールを無くし、学生へのスカウトメールへ

ーこれからのチャレンジについてお聞かせください。

お祈りメールをなくすということが最終的な着地地点だと思っています。
うちのビジネスモデルは、採用をうちのプラットフォーム上で行った際に、成果報酬が発生するというものです。
逆を言えば、学生側に他の企業を紹介するだけなら完全無料です。

かつ、お祈りメールにはテンプレ文があると思うのですが、それをうちのものに置き換えるだけでできてしまうんです。
ゼロ工数ゼロコストで学生側の幸福が生まれます。
正直、やらない理由がありません。

このHRportを普及させて、最終的に一方的に関係を切るようなお祈りメールを日本の世の中からなくすことができたら、凄く面白いと思っています。
だからこそ、僕は全力でこの事業に取り組んでいきたいと思っています。

ー今の事業に、複業時の経験は活きていますか?

あります。僕がこの事業を思いついた原点は、複業の経験からなんです。
新卒採用や長期インターンの採用を見ていたのですが、年間何百人、何千人、何万人の学生さんと会っている企業さんがいる中で、そのうち98%の出会いが無駄になっています。

その時間は企業としてもただの工数にしかならないし、学生としてもわざわざ出向いてアピールしたのに結果届くのがお祈りメールで終わってしまうというのは、両者ともにとって損だと思うんです。

最初にコンサルとして入って現状をヒアリングする機会が多かったからこそ、そこの課題に着目できたので、複業をやっていなかったら、HRportは生まれていませんでした。
その時の経験があったからこそなのです。

ー仕事も含め多くの事を複数経験したからこそ、森さん今があるのですね。

そうですね。起業とは課題発見、課題解決でしかないと思います。
その課題を発見できる確率が何によって決まるかというと、経験の数だと思うんです。そうなった時に、複業って素晴らしいと思います。

色んな業界、色んな会社の中に潜り混んで、一緒に仕事していく中で、その人たちの課題を見つけて、それを解決したいと思ったら、事を起こす、起業するというのが最も効率的だと思っています。

ー最後に、これから複業をする人へ向けて、アドバイスをお願いします。

複業は、参入障壁の低いチャレンジだと思うんです。
いきなり起業するとなると、情報がないですし、本業を辞めて起業にフルコミットすると、潰れる可能性の方が99.9%なので、かなりハイリスクハイリターンなのだと思います。

一つ前提として、学生であればノーリスクです。
しかし、一度就職した後であれば、リスクは伴うものだと思います。

個人として稼ぐ力をつけるために、本業に所属しながら複業から始めてみて、複業をやっていく中で、解決したい価値のある課題を見つけたなら、独立して法人化するなり個人のフリーランスとしてやっていくなりというキャリアが、一番ノーリスクハイリターンだと思います。
だから、複業はやった方が良いと思います。

ー学生に対しても複業はオススメしますか?

やった方が良いです。学生が複業をやるのであれば、自分の強みを活かした方が良いと凄く思います。
僕自身も、なぜ採用コンサルという複業を選んだのかというと、人事がアポの獲得率と単価が高いだろうという仮説の元なんです。

なので、採用イベントに行って学生として人事に会って、「高校の時に起業をした」という話をすると、「君面白いね」と絶対なるんです。
「後日カジュアル面談しようよ」という話になって、「僕自身就職を迷っている。でもやるとしたら人事だ」と言って、「御社ではどういうことをしているのか」を聞いて、課題をヒアリングする中でそれに対して適切なアドバイスをするということをやっていました。

それで「すごく良いね」と評価をもらえて「もし良ろしければ…」と採用コンサルの話をすると、高い成約率になりました。
なので、営業工数はあまりかかっていなかったと思います。
イベントに行ったらそれだけで2,3件獲得できました。

結局は自分の強みを活かすのが最適だと思っています。
僕自身は「高校の時から起業していた」というのが一つのブランドになっていました。

それを生かすために、新卒採用しようという考えになりました。
学生それぞれ気付いていないだけで自分の強みはあると思うんです。
それを、ブラッシュアップしたり、大きく見せたりりで、実行に移しながらパワーアップしていくと良いと思います。

今後の発展をお祈りします
この記事を書いた人
アバター
JP

Signpost編集者及びAnotherworks創業メンバー。

RANKING

人気のタグ