杉本朱:大手人材会社にて採用コンサルを経験後、事業会社の人事をトータル10年経験。
大手からスタートアップまで、採用〜育成〜評価〜制度〜労務まで幅広く経験。
2018年からフリーランス人事として活動を開始し、コンサルよりも踏み込んだ、社内人事よりも客観的な立場で、人事課題の解決に取り組んでいる。
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会社がなくなるところから始まった複業ライフ

ーどうしてフリーランス人事という働き方を始めたのですか?

本当に成り行きからスタートしました。

これからサービスがグロースするフェーズの会社に採用担当として入社したのですが、1年後には事業譲渡が決まり会社を閉じることになりました。

 最後の方には、自分の人件費も会社の足元を重たくするなと思って、一足先にアルバイト形態に切り替えることにしました。そこからはフルリモートで働いていたのですが、転職活動をしている暇もなく・・・という末の、失業系フリーランスです(笑)

とはいえ、元々自由に働きたいなと思ったり、複数掛け持ちしたいなという思考は持っていたので、「現職も次の転職先も無い、こんなにまっさらな状態ってなかなかないな」という気持ちで、何か始められないかなと思っていたところ、お知り合いの方から「うちでちょっと手伝う?」とお話をいただいたところが始まりです。

 そこから複数社でお仕事をさせていただくようになって、気が付いたら「これは世に言うフリーランスっていう状態かな?」と思って、フリーランス人事と名乗るようになったのが現在です。

一社よりも複数で働きたいという思い

ー元々複数社で働きたいという想いがあったとのことでしたが、どういった背景でそのように思われたのですか?

明確に何かがあったというわけではないのですが、1社の中で人事の仕事をしていると、結構閉じた世界だなと感じることが多かったんです。

社内のことしか見えなくなって、”社内の当たり前”の中で考えるようになってしまう、と言いますか…。
7年ほど同じ企業で人事をやったことがあるのですが、3年目くらいから「1社では世界が広がっていかないな」と感じていました。

 そう思っていた時に、人事系のコミュニティに参加するようになりました。「他社はこんなことやっているんだ」という学びや、「自分の会社でも適応できるんじゃないか」という気付きがあって、世界が広がってすごく面白かったんです。

 「これって1社の中でとどまっていてもできるけれども、今回職を失ったタイミングでそういう働き方にシフトして、同じ時間で複数の場所で働く、ということにトライしてみてもいいんじゃないかな」と思い始めたことがきっかけです。


異なるフェーズの会社に属することで、得られる知見が広がる

ー複数の会社で働いているシナジーみたいなのは実際どうでしょうか?先ほどおっしゃっていただいていたようなことは日々感じられますか?

あります。

特に人事の場合、抱える課題が会社のステージによって変わるので、例えば、サービスが立ち上がったばかりの創業2年目というA社と、創業5年目でサービスが安定し始めているフェーズのB社があった場合、A社にとってはB社が未来の姿になるんです。

B社で抱えている課題や取り組んだ打ち手が、A社にとっては参考になります。もちろん各社課題はオリジナルなので全てが適応できるわけではないですが、課題整理のフレームワークは応用できるな、と感じます。

あとは、ツールや媒体や業者などは、あっちでうまく行ったケースをこっちでも活用してみる、みたいなことはよくありますね。

ー実際に今入られている会社はいくつあるんですか?

現在の契約としては3社ですが、契約している会社のグループ会社のお手伝いも担っているので、それを含めると5〜6社くらいになりますね。今年の6月に病気を発症した関係で、今は案件数をセーブしているのですが、それ以前は8〜9社ほど同時にお手伝いしていました。

一番依頼が多い案件は、採用ですね。特に中途採用の案件が多くて、「半年〜1年以内に採用したいと思っているけど、何からどうすればいいか・・・」という悩みがあり、それを解決するために依頼をいただきます。

恐らく、発注側としても、課題が明確なのでプロジェクト単位で切り離して依頼しやすいんだろうな、と思います。最初はこのように「このポジションの人を採る」という単発プロジェクトで契約を開始することが多いです。

ただ、採用のお手伝いをしていくと、実は課題が採用以外の領域にあることって多々あって。仮に離職率が高い職場だとしたら、いくら人を入れても辞めるサイクルが繰り返されてしまうので、採用と同時並行で離職の原因特定と対策を講じないといけません。

原因が育成にあれば育成プログラムを組むし、業務フローにあればフロー構築に走るし、コミュニケーション不足などカルチャー要因であれば文化形成に取り組むし、という感じで、採用から人事全体のチューニングに発展することが多いですね。

転職エージェントがいきなり人事の複業をすることは難しい

ー転職エージェント出身の方とかも先ほどのプロジェクトだったら入れそうな印象はあるんですけれども、けっこうエージェント出身の方でもいらっしゃるんでしょうか?

いるはいるのですが、エージェントの仕事と事業会社での人事の仕事は結構違うので、事業会社の人事をやったことない方がいきなりフリーランス人事になるっていうのは、結構難しいんじゃないかな?と思います。

ーどんなに採用の経験がありますとエージェントの方が言っても、そのプロジェクトに入っていくというのはすぐは難しいかもという状況なんですね。

「採用の経験」と言っても、”エージェントと事業会社人事では担っている部分が異なる”からではないかと思います。

例えばエージェントとの連携を強化するというプロジェクトだったら、もちろん得意領域だと思うのですぐにでもできるんじゃないかなと思います。

しかし、企業が抱えている課題はもっと手前にあって、「このポジションを採りたいけどどうしたら採れるか分からない」という状況が多いと思うので、「エージェント対応だけ依頼しよう」というところまで因数分解できないんじゃないかなと思います。

フリーランスって、「できることで案件を取る」が基本だと思います。
スキルの切り売りから始まると言うか…。

できないことで仕事はとれないので、人事としての現場経験が無い=切り売りするスキルが無い、という状態でいきなりフリーランス人事はなかなか難しいのではないかと思います。

ー人事といえば会社の中で重要なポジションになるイメージがあるのですが、外部の人として入って大変なことってどういうことがありますか?

「社内の情報をどれぐらい開示してもらえるか」という面では、クライアントによっては「大変だな」と感じることはあります。

おっしゃる通り、人事にまつわる情報は会社にとって機密情報であることが多いので、なかなか開示しにくいという事情もあります。
とはいえ、情報がないと戦略も対策も練れないので、まずは開示していただけるよう信頼関係を築いていきます。

ただ、中には「フリーランス」を「外部の人」とか「タスクを依頼する人」と捉える企業もあると感じていて。「外の人」と捉えられると情報が開示されないし、「タスクを依頼する人」と捉えられると上下関係が発生して言うべきことを言えなくなってしまいます。

それに気付いてからは、情報をオープンにしてくださって同じ目線でプロジェクトに取り組めるスタンスの企業をメインにお手伝いする方針に変えました。

まずは小さい案件からスタートして信頼を貯めていく

ーそうすると先ほどのお話でスモールスタートで始められるというのがありますよね。

そうですね。最初の契約は、限定的な情報だけでもお手伝いできる範囲のプロジェクトだと、お互いスタートしやすいんだろうなと思います。


ー現在の案件というのは結構お知り合いの方からいただくことが多いかったでしたか?

現在契約している3社は、知り合い経由が1社、エージェント経由が1社、フリーランスのマッチングのプラットホームでお声がけいただいたのが1社、という感じです。

ー結構様々なところから開拓されているんですね。。

エージェントというと、いわゆる転職エージェントみたいに案件をエージェントの人が紹介してくれて、面接してみたいなイメージなんですか?

フリーランスに特化したエージェントがあって、仕組みは人材紹介と一緒です。

ーフリーランス協会のデータで、報酬が一番大きいのは、実は知り合い経由じゃなくエージェント経由という話を聞きましたが、実際はいかがでしょうか?

それは結構あるあるだと思いますね(笑)

 私の場合は、エージェントの方に間に立ってもらって金額交渉をしてもらうことを期待していたわけではなかったので、単純に案件が大きかった感じだけかもしれませんが。

最初に単価を決める時はめちゃくちゃ悩みましたね・・・どれぐらいが適正なのか分からなかったり、フリーランス人事ってまだあまりいないので参考にできる情報もなくて、結構悩みました。

最初は会社勤めの時の給与を時間で割って時給換算して、予想される工数でいくら、という出し方をしてました。でも、社会保険料や税金についてすっかり失念していたことに後々気が付いて・・・初めて税金の納付書が来た時に「あれ?足りないかも・・・?」となって、そこから単価を変えていったのは秘密です(笑)

ー今後フリーで働きたい方はこの点気を付けないといけないですね。安売りしすぎると、かえって社員の方がいいかもしれないなんてなりかねないです。

そうですね。複業をしている人事や、フリーランス人事の方と会うようになって情報交換すると、私はかなり安い単価でやっているんだなと今でも思います。

ー現在でも比較的安価にやられているんですか?

他の方の単価を聞いて「自分は結構安い単価でやっているんだなぁ」と、びっくりすることが多いので、みんな何を基準に金額を決定しているんだろうと思ったりはします。

ー言い値で決まることが多いのでしょうか?

フリーランスとしてはまだ確立された職種ではないので、言った者勝ちみたいなのが現状なのかなぁ・・・?まだ皆さん探り探りなんじゃないかな?

フリーランスとして単価を上げていく、という文脈だと、自分のレベルを上げていくだけでなく、社内で見つけた課題に対する対策を提案して「経験は少ない仕事ですが一緒にトライしませんか?」と能動的に関わっていくことは重要だと思います。

まずは社内の方とコミュニケーションをとって、信頼を築いていく

いきなりではなく徐々にリモートにすることがコツ

ー現在に至るまでリモートでお仕事をされていたんですか?

以前勤めていた会社でリモートで仕事していたこともあったのですが、フリーランスになってからはリモート可の企業さんだけのお付き合いになってますね。複数社同時にお手伝いするとなると、毎日は全てのオフィスに行けないので。でも個人的には、社員の顔を見ながら仕事をすることが人事の仕事に活きると思っているので、なるべくオフィスに出社するようにしています。

採用単体のプロジェクトの場合は、媒体の運用代行、スカウトの代行、候補者とのやり取りの代行などが多いです。

 もう少し上流の仕事になると、週一で定例ミーティングを組んで「事業計画と採用計画、連動してますか?」とか「採用戦略を立ててみましょう」など、戦略立案の壁打ちをします。お伺いした事業計画から、「来年の今頃はこういう組織になっていないといけませんね」と組織像を描いて、そこから逆算して「いつまでにどのポジションを採る必要がありますね」という流れで採用計画を作っていきます。

オンラインでもミーティングができるので、Zoomやwherebyなどを使うこともあります。ただ、信頼関係があってのオンラインミーティングだと思っているので、最初の方は対面でミーティングをするようにしていますね。

 お互いに慣れてきたら、「今日のミーティングはリモートでやりましょう」と切り替えることもあります。あとは、Slackなどツール上でのテキストコミュニケーションも大事で、そこでもあまり齟齬がでないようになったら、さらにリモート比率を上げていけるようになりますね。

エンジニアとかデザイナーとか「作業範囲はここからここまで」と切り分けられるお仕事だったりすると、いきなりフルリモートで複業やフリーランスも可能だと思うんです。

 人事は多くの人と関わることに価値がある職種なので、社内の人間関係を作るとか、各部署の責任者の人と会話ができるようになるとか、そういうことが大前提にないと進んでいかない仕事です。そこが他の仕事と異なる部分かもしれないです。

ーフリーランス人事のニーズが高まっているように感じるのですが、現場で働く杉本さんはどう思われますか?

私はいきなり失業してなったので、ニーズがあるとかはあまり考えないでスタートしたのですが、初めてみてから感じるのは、想像以上に引き合いがあるんだな、ということです。フリーランスになったのは2018年11月ですが、多い時は8〜9社のお手伝いをさせていただいていました。

 「フリーランス人事とは何を提供できるのか」をしっかりと発信していけば、たくさんニーズがある時代なんだなとは感じます。

ーあえて反対のところをお聞きしたいのですが、フリーランスじゃなかった時のほうがよかったことってあったりしますか?

事業会社に所属していた頃を考えると、やっぱりリソースは事業会社所属の人事のほうが持っていると思います。

例えば「●●について会議しましょう」というと、フリーランスだと私しか動ける人がいないけど、社内だったら他部署の人に協力を仰げて、「こっちの仕事はそちらでやってもらえませんか」という役割分担もできます。

他にも、決裁者がなかなかイエスと言わない場合、別ルートから根回しして承諾を得る、みたいな動きが取りやすいのは社内の人だな、と思います。私はフリーランスの中でも、結構どっぷりクライアントに入り込むタイプなので、今でも社員の方に協力してもらいつつこのやり方は続けていますが(笑)

フリーランス人事の”Guild(ギルド)”を立ち上げる

ー現在よく行くコミュニティーや、情報収集をするコミュニティーについて教えてください

コミュニティーというと所属するしないという概念だと思うのですが、「仲がいい人たちで集まろ!」というような、もう少しラフなものでしたらあります。サロンのように会員っていう考え方があるわけではないですね。

「Guild(ギルド)」って聞いたことありますか?
同業者で助け合う集まりみたいなもの呼称なのですが。

実は「HR Guild」というものを仲間と作り始めているところです。

私自身が、構想もなくフリーランスになってしまったもので、「色々と悩むことがあるのに相談できる人がいない」、という状況が結構大変だったなと思ったのです。

他の人たちも同じような悩みを抱えてとしたら、フリーランス人事が集まって知見を共有できるような場ができたらいいなと思っていて。

 「案件を継続的に取るにはどうしたらいいか」、「契約書は何に気を付けて締結したらいい?」「単価の決め方が分からない」というような悩み事を、チームで解決できたらいいなと思って始めました。

以前、私が8〜9社抱えていた時には、「これ以上案件をもらっても残念ながら受けられない」ということがありました。

 でも、困っているお客さんを「受けられません」と言って断ってしまうのが切なくて…。

こういう時に、他に案件を紹介出来る人がいたらいいな、とフリーランス人事の人たちで話していて、それだったらGuildを作ってみるのはどうかな?という話も、Guildを作るきっかけになりましたね。

現在は、最初の頃から少し形を変えていて、フリーランスに限らず「組織や人事に関わる人が特定の課題を通じてつながる」場になりつつあります。

 例えば、ティール組織を実践している企業をゲストに招き、これからティール組織を目指したい企業の人事が集まって勉強会をしたことをきっかけに、holacracy Guildが立ち上がったりしています(分科会のようなイメージです)。

あとは、フリーランス人事・副業を始めたい人事で「どんなHR Guildがあったらいいか」をディスカッションしたりしています。

 すでにフリーランスの方も、今後フリーランスとして活躍したい方や、副業を始めたい事業会社の人事の方なども、大歓迎です。交流会もやっているので、ご興味をお持ちの方がいましたら、ぜひ参加してみてください。

杉本さんへご相談・ご依頼がある方は

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この記事を書いた人
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ふじもん

AW編集長。
大手人材会社⇨2期目のスタートアップ⇨渋谷のベンチャー。
1社目の同期である社長に誘われ、AWに参画。

複業をすでにされている方がいらっしゃいましたら、是非ともお話お伺いしたいのでメッセンジャーでご連絡ください。

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