嶋田 匠 (Shimada Takumi)1992年生まれ。
現在27歳。慶應義塾大学商学部卒。学生時代は原宿キャットストリートで「無料相談屋」として1000名を越える通行人の相談に乗る。大学卒業後、2015年リクルートキャリアに入社。入社後は、クライアントの新卒/中途採用支援、リクルート専属代理店の経営支援を担う。2018年、リクルート在職中に日替わり店長のソーシャルバー「PORTO」を友人と共に開業。その後リクルートから独立し、採用を中心とした組織/人事のコンサルティング会社を経営しながら、個人の“らしさ”ドリブンな複業を支援する事業「コアキナイ」をスタートさせる。
「誰もが居場所を感じられる世の中をつくる」ために、思考と実験を繰り返しています。
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全然他人に共感できなかった学生時代

大学生の時に東進ハイスクールでバイトをしていたのですが、「自分は人に共感したり、傾聴することが致命的に苦手だ」ということに気が付いたんです。

前提として東進は映像授業なので、自学自習が基本となります。

アルバイトメンターの仕事内容は多岐に渡るのですが、役割期待は、担当している生徒たちの志望校合格に向けた学習の進捗管理とモチベーション管理です。その際に大切になるのが、「自分はなぜ受験勉強を頑張るのか?」という動機を生徒が見つけられるようにサポートすることです。最終的には、目指す高さも、コミットする勉強量も、決めるのは生徒なので、自分の中に腹落ちできる動機を見出せるかどうかが最後の明暗を分けるんです。

そのため、「なぜ勉強をするのか?」ということを個人と向き合って、一緒に掘り下げて言語化していく必要があるのですが、なかなかそれができなくて。(笑)

このままではいけないという自覚はあったので、とりあえず色々な人の話を聞きまくって、話の中で色々な価値観に触れたり、質問する力や傾聴する力が身につけばいいなと思い、原宿で「無料相談屋」を始めました。

原宿のキャットストリートを通る人たちに声をかけて、その人たちの相談に乗るというものなのですが、やりだすと楽しくなってきて、卒業までに1000名を超える方の相談に乗りました。
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「事業づくり」と「組織づくり」を学びたい

自分が「居場所」というものに悩むことが多かったこともあり、漠然と「人の居場所づくりがやりたい」という思いがありました。リクルートに入ったのは、この想いを事業化したいと思った時に、「起業といえばリクルートなのかな…」と考えたことがきっかけでした。

また、学生の時に出会った経営者の方々が、「事業づくり」よりも「組織づくり」に悩んでいると感じました。こんなに”未来の価値”が見えていて、面白いビジネスモデルがつくれて、想いを持っている方でも、「組織をつくって運営する」ということには、ここまで大変なことなのかと学生ながらに思いました。

そこで、リクルートグループの中でも「経営者の組織づくりに伴走できる事業はどこか?」と考え、リクルートキャリアに入社することにしました。

苦難の新人時代

リクルートはみんな意欲的に働く会社だったので、本業で結果を出すのも大変でした。

初任配属された営業部では思うように結果が出せなくて、周囲から認めてもらえない、居場所を感じられない時期が続きました。その状態からなんとか抜け出したくて、平日の退社後も、休みの日も、アポイントをもらえた企業の店舗に行って販売員の動きを見たり、ネットで情報を集めて事業課題の仮設を立てたり…ほぼ全ての時間を仕事に注いでいました。

そのため、結果が出せない期間は、大学時代の友人ともほとんど会うこともなく、会社内でもプライベートでも、どこにも居場所がないように感じていました。

その後、少しづつ結果がついてきたのですが、「こういうことって多かれ少なかれみんなにもあるんじゃないか」と思ったんです。社内で認めてもらえることで、ようやく少し余裕が出てきて、「居場所づくりの事業をやろう」と思うようになりました。

居場所である”よりどころ”と”やくどころ”

私は「居場所」というものを”よりどころ”と”やくどころ”の2つだと定義しています。1つ目の”よりどころ”というのは、利害とは無関係に、裸の個と個で信頼し合えている関係性。そして2つ目の”やくどころ”というのは、個人やコミュニティに対して価値を提供できるから認められる、必要とされるという関係性。

人は”よりどころ”だけでは自分の居場所に確信が持てず、”やくどころ”だけではどこか空虚な孤独感を感じてしまう。そして、どちらの居場所も持てないという時、自ら死を選んでしまうことさえあるのだと思います。

前置きが長くなってしまいましたが、僕は自分が運営する事業を通じて、人が”よりどころ”と”やくどころ”をどちらも感じられるという状態を科学し、実現していきたいと思っています。

「”よりどころ”を感じる」という上での課題は、点線になってしまった”よりどころ”をいかに実線に戻すかということだと考えています。家族や、学生時代の友人、前職の同僚など、多くの人に”よりどころ”と呼べるような関係性があったと思います。

しかし、リクルートに入社した直後の僕のように週5日フルタイムで仕事をしていると、なかなか今まで築いてきた”よりどころ”を直接会って確認する機会が乏しくなってしまう。そしていつの間にか、SNSによって保存されているだけの”点線”の関係性になってしまう。

ただ、もしも自分が場を持てていたら、約束も無しにフラッと旧友が立ち寄ってくれて、”点線”になってしまった関係性を”実線”に戻すことができる。そんな「もしも」をハードル低く実現するために、店長日替わりのソーシャルバーPORTO(ポルト)を始めることにしました。

●ソーシャルバーPORTO(ポルト)のhttp://porto.tokyo/HP

PORTOは、リクルート在職中に立ち上げました。リクルートは副業が許されていたので、物件を取得してからオープンまでの4ヶ月間と、オープンしてからの5ヶ月間、構想も含めると約1年もの間、リクルートでの仕事と二足の草鞋で動いていました。

仕事のやり方を見直して、良い仕事が得られた

リクルートを退社してから、PORTO以外にも組織/人事のコンサルティング会社を経営しています。立ち上げ当初は新規のお客さんからご期待いただくことに苦心していたのですが、リクルートに対する恩義をものすごく感じていたので、リクルート時代のお客さんには頼らないと決めていました。

最初の1月くらいは本当に仕事が無かったので、とにかくアポイントを入れなければとテレアポもしていました。ただ、このまま小さな期待を数多くいただいて手一杯になってしまうと、自身の成長に繋がるような面白い仕事を探したり、創り出す余裕がなくなってしまうと感じました。

そこで、仕事が埋まらない焦りはありましたが、求人広告の代理店という切り口ではなく、上流の組織コンサルという切り口でご期待いただける案件を探そうと考えました。

そう考えはじめた時に、知り合いからご紹介をいただいたITベンチャーから、最初のコンサル案件を獲得しました。戦略を切り替えていたことで、工数だけは沢山あったので(笑)、元々の期待を大きく超える価値を提供できて、信頼していただくことができました。そこからは、満足いただいたクライアントからのご紹介で、新規の案件を得られるようになりました。

他にもリクルートの先輩や元同僚から「こんな人紹介するよ?」「こんな仕事なんだけど受けられる?」という連絡をたまに頂きます。本当に温かい会社です。

本業の経験が独立してからも活きる

リクルートでの在職期間のほとんどを、代理店部という部署で過ごしました。代理店部というのは、リクルートのメディアを営業してくれている代理店が、各々の掲げるビジョン/ミッションを守りながら、持続的に事業成長していけるようにサポートする部署です。

1人で4~5社ほどの代理店を担当して、 代理店各社の「①継続的な事業成長」「②ビジョン実現」という2つの観点を両立した成長戦略/経営計画/要員計画を一緒に考え、事業戦略への落とし込みや、その推進までハンズオンで伴走するコンサルタントのようなイメージです。

事業戦略を考える上で、大きく「商品戦略」と「チャネル戦略」という2つを検討すると思うのですが、代理店部での仕事の場合「商品戦略」を決めるのはリクルートになります。そうなると、代理店が主として考えなければならないことは「チャネル戦略」です。そして、その中で最も大切になるのが、組織のデザインだと考えていました。

成長戦略を実現させるために、「採用」「配置配属」「評価」「育成」「退職管理」「社内コミュニケーション」が有機的に設計できているか。この「組織のデザイン」が経験が、コンサルの仕事にはもちろん、PORTOの日替わり店長コミュニティの運営にも活かせています。


オープン延期がきっかけで退職を決意

入社して3年半というタイミングでリクルートを辞めるということは、実は考えていませんでした。もう少し残りたかったな〜というのが本音です。笑

リクルートの退社を決意したきっかけは、バーのオープンを延期したことでした。当初2018年5月にPORTOをオープンする予定だったのですが、諸々の事情で計画の修正が必要になり、結局オープンが1ヶ月後の6月になってしまいました。

開業資金をクラウドファンディングで募り、ありがたいことに合計で127名の方にご支援をいただくことができました。「この127名からいただいた期待に絶対に応えるんだ」という思いで、必死で立ち上げに取り組んでいたので、コミットした5月オープンという約束を守れなかったというのが、僕にとっては本当に悔しくて、悲しくて、申し訳ないことでした。

クラウドファンディングのページ

期待を裏切ってしまうことが怖くて、「本当に開くの?」と聞かれても、ギリギリまで「開けます!」と言い続けていました。そして、4月も中旬になってようやく、どうにもならないということを悟り、最終的には1人1人にオープンを延期する旨のメッセージをお送りしていきました。罪悪感と悔しさで、涙が止まりませんでした。

リクルートからの期待(仕事)にも、個人的に支援してくれた期待にも、どちらにも応えようと頑張っていましたが、それが果たせなかったという時に、どちらの期待に応えたいのか選ばなければいけないと思いました。そして、リクルートからの期待ではなく、個人的に応援してくれている127名からの期待を選ぶことを決め、本格的に退職交渉を始めました。

”やくどころ”を作る新規事業をスタート

2019年から「コアキナイ」という、個人のらしさを活かした複業の立ち上げを支援する事業をはじめました。今度は”よりどころ”ではなく”やくどころ”にフォーカスを当てたビジネスです。

https://koakinai.studio.design/

”やくどころ”を感じるという上での課題は、多くの人にとって「外部に依存したもの」になっているということにあると考えています。

複業がかなり一般的になっているものの、”やくどころ”という居場所をいくつも持っている人は珍しく、1つの会社というコミュニティしか持っていないという方がまだまだ多いです。さらに、会社というコミュニティで得られる”やくどころ”はどうしても、組織ありき、マーケットありきのものになるので、組織やマーケットが変わってしまえば、簡単に揺らいでしまう、外部に依存した不安定なものです。

それに対して、個人の”らしさ”というものは、18歳を過ぎると安定的なものになります。ここでいう”らしさ”というのは、「志向(意思決定の基準)」「嗜好(好き/嫌い)」「資質(強み/弱み)」の3つを指しています。

そんな考えから、マーケットや組織から期待される役割に応えることで”やくどころ”を得るのではなく、小さくても良いから「個人のらしさ」起点で”やくどころ”を得られる人を増やしたいという課題意識を持つようになり、個人の”らしさ”の言語化から、それを活かしたスモールビジネスの立ち上げまでを支援する「コアキナイ」を始めました。

まだまだ事業化に至った事例は多くないので、こちらに関しても着実にサービスを磨いていきたいです。

色々と話してきましたが、今までも、これからも、自分の活動のコアは、やはり”居場所づくり”なんだと思います。「どうしたら、”よりどころ”と”やくどころ”を感じられるのか?」という観点でのアプローチが「居場所を感じる」ということに寄与しそうだという手応えはあるので、この2つの観点でビジネスを磨き続けていきたいと思っています。